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わたし、真の意味で、吹っ切れた気がする。
今、本当に新たな一歩を踏み出せる。
じゃあ、一歩踏み出す先にいるのは、誰?
フッと脳裏に湧いた自問に、トクン、という心地よい鼓動を感じ、わたしは目を閉じて息を吐く。
その時、不意に遼太が言った。
「誠に会ったんだって?」
心地良い鼓動だった筈の拍動が一気に、どっきん、という大きな脈動に変わりビックと震え、わたしは携帯を落としそうになった。
慌てふためき、携帯を反対の耳に当て、答える。
「え、ああ、そうなの。
仕事で、久しぶりに会って……」
デートもした、とは言えなかったけど。
心を読まれた、と思ってしまうほどタイムリーな遼太の言葉に、わたしは恐る恐る聞いた。
「遼太、緒方君と今でも会ってるの?」
少しの間があったように思う。
一度息を吐く気配があった後、遼太が言った。
「ずっと会ってる、と言いたいところだが、実は、10年くらい前に一回切れた」
「そう、なの?」
「ああ……、アイツ、友人知人、との関係を、絶った時期があるんだ。
その時に、ちょっとな」
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