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遼太の言葉は、何かが挟まったような、歯切れが悪いものだった。
遼太は、言葉を選んでる。
そう感じた。
話せない何かがある。
そう思った。
少しの間わたし達の間に流れた重い空気を遼太が変えた。
「でもな、アイツはちゃんと俺のとこに戻ってきたぜ。
それからは週に一度は呑んでる」
カラカラと笑った遼太の声はいつのも遼太の声だった。
思わず釣られて笑っちゃう。
「長い付き合いだと、会えない時期もあるよな」
「そうね」
いつも、ハッキリとした物言いをしてくれる遼太の、歯切れの悪さは少し気に掛かったけれど、確かに、付き合いが長くなればそんな時期もあるわよね。
わたしだって、司法試験に受かるまでの数年間、ほとんど千尋に会えなかった。
そうだわ、それと同じよ。
そう思おう。
そして何より、緒方君は大事な友人である遼太にわたしと会ったことを報告してくれていた。
そう考えに思い至った時、あれ? と思った。
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