カルテ11 過去にサヨナラ

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だとしたら、緒方君は、どんな風にわたしのことを?  急にドキドキし始めた胸をそっと押さえるわたしの耳に、 「誠のこと、菊乃なら安心して任せられるんだけどな」  呟くような、でも切実な、そんな響きを持った遼太の声が届いた。 「遼太?」  少しの間を置いて、遼太の言葉が言った。 「誠の過去、お前なら、お前くらい懐の深い女なら、受け止めてやれるだろ?」  ドクン、ともビクン、ともとれる震えるような感覚があった。  緒方君の、過去? 遼太は、あの心中騒動のことを言っているの? それとも、他に? わたしは、あの時に緒方君と彼女が抱えていた問題も、心中に至った理由も知らない。 その後二人がどうなったかも。 遼太は、知っているのだろう。 でも、一度は切れたという緒方君との関係。 そこに、何か隠されているの?  遼太に、ちゃんと話してもらう? 一瞬思いついた考えを、わたしは掻き消した。 ダメだ。これは、緒方君の口から、聞かないといけないと思う。
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