111人が本棚に入れています
本棚に追加
だとしたら、緒方君は、どんな風にわたしのことを?
急にドキドキし始めた胸をそっと押さえるわたしの耳に、
「誠のこと、菊乃なら安心して任せられるんだけどな」
呟くような、でも切実な、そんな響きを持った遼太の声が届いた。
「遼太?」
少しの間を置いて、遼太の言葉が言った。
「誠の過去、お前なら、お前くらい懐の深い女なら、受け止めてやれるだろ?」
ドクン、ともビクン、ともとれる震えるような感覚があった。
緒方君の、過去?
遼太は、あの心中騒動のことを言っているの?
それとも、他に?
わたしは、あの時に緒方君と彼女が抱えていた問題も、心中に至った理由も知らない。
その後二人がどうなったかも。
遼太は、知っているのだろう。
でも、一度は切れたという緒方君との関係。
そこに、何か隠されているの?
遼太に、ちゃんと話してもらう?
一瞬思いついた考えを、わたしは掻き消した。
ダメだ。これは、緒方君の口から、聞かないといけないと思う。
最初のコメントを投稿しよう!