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緒方君が、話したい、と思ったタイミング、ううん、わたしに話したい、と思ってくれた時に、聞きたい。
わたしの脳裏にふと、遼太の言葉がリフレインされる。
『お前なら受け止めてやれるだろう』?
こめかみに手を当て、目を閉じ、わたしはじっと意味を考え、ゆっくりと口を開いた。
「遼太」
電話の向こうから、ん? という声。
わたしは、ゆっくりと言った。
「緒方君にも、選ぶ権利はあるでしょう」
一瞬の間があったが、アハハという快活な遼太の笑い声がわたしの、今の重い思考を吹き飛ばしてしまった。
「それならきっと大丈夫だ」
「大丈夫? どういう意味? その大丈夫はどこにかかるの?」
能天気とも言える遼太の言葉と声の調子に、真面目に考えていたわたしは少し強い口調で返した。
遼太は。
「菊乃のことを話していた誠の様子を見れば分かる。
いくら一時関係が切れた、と言ったって、どれだけの間アイツを見て来たと思う?
俺は、アイツとバッテリー組んでいたんだぜ。
アイツの思う事なんて、見てるだけで手に取るように分かる」
わたしは、何も言えなかった。
遼太の言う言葉は、何故か昔から説得力があった。
ねえ、遼太。
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