カルテ11 過去にサヨナラ

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 あの日、法廷に響き渡っていた玲さんの硬く冷たい声は、わたしを斬る、切れ味の鋭い刃となった。  負けた。 そう思った瞬間だった。 正義であったはずのものが、覆されてしまった瞬間だった。  あの時わたしは自分の力を思い知ったの。 クライアントさんを守ることすらできない、自分の力の無さを。  法廷で判決が言い渡された日の、彼女の顔が今でも目に焼き付いている。 今にも泣きだしそうなのに、泣かない、どこか諦めたような、言い表せない感情がもどかしい、そんな表情。  でも、彼女がわたしに残した言葉が、その表情以上の鮮烈な記憶になっている。 『翠川先生が私の為に、ご自分の今の居場所全てを失ってでも、って闘ってくれたことが、嬉しかった』  そんな言葉を言ってもらっても、わたしは結局勝てなかったの。 あなたを守れなかったの。  ごめんなさい、ごめんなさい。  わたしはずっと、胸の中で繰り返していた。  夢と現を行き来するような、うつらうつらしているわたしの耳に、柔らかで可愛い、そんな声が聞こえてきた。
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