カルテ12 『どうして欲しい?』

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 やっぱり、わたしはこの声が聞きたかったんだ。 耳からすっとわたしの中に滑り込み、深く浸透した声は、心を優しく抱き締める。 「今夜は、どうしたの」  柔らかな声が、優しく聞いた。 声がもたらす快感に、ちょっと酔いしれてみたくなる。 もう少し、その声を聞かせて。 「どうしてだと、思う?」  緒方君の口から、言葉を引き出してみたくなった。 仕事じゃないの。 きっかけが、欲しいの。  少し前に電話の向こうから聞こえていた声とは違う。 遼太の声は、真っ直ぐで強く、グッと迫ってくるような声。  緒方君の声は――、 「どうしてかな……」  フッと笑っている気配。 緒方君は、そうだな……、なんてちょっと考えている風。 ちょっぴり焦れて、わたしは言う。 「考えて。ちゃんと」  わたしの事、考えて。
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