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「え、やだ、病院から遼ちゃんのとこに電話が?」
遼ちゃん?
あ、ひよりちゃんの声だ。
わたしはゆっくりと目を開けた。
朦朧としていた脳内の視神経が目覚め、周囲の様子が確認出来た。
わたしが横になっているソファは、衝立に囲まれた一角にある。
その衝立の向こうで、ひよりちゃんが誰かと電話で話しているようだった。
誰か。
遼太ね。
自分の中の問いに直ぐ、答えが結ばれる。
今聞こえたひよりちゃんの言葉の断片で、相手は分かったもの。
耳を澄ましているつもりはないけれど、聞こえてくるひよりちゃんの声を、わたしはぼんやり聞いていた。
「うん、本当は帰らずにすぐ入院しなさいって言われたんだけど、どうしても子供達に会いたくて。
え、今? えと……あの……あ、あのね、お友達に会っちゃって、久しぶりだったから、お茶しちゃって」
話しの内容から、ひよりちゃんは本当は直ぐに家に帰って入院しなければいけない状況であることが窺えて、わたしはガバッと起き上がった。
ひよりちゃんたら!
少し休んだだけで、さっき倒れそうになっていた貧血は納まったようだった。
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