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わたしが、弁護士になりたい、と思ったのは高校1年の時。
祖母が亡くなった時だった。
いわゆる二号さん、お妾さんだった祖母は、財力ある男性に(顔も名前も知らないけれどわたしの祖父にあたる男性)に見受けされ、家を与えられ、そこで母を生み、孫、ひ孫まで育てた。
その祖母が亡くなった時、家と土地を巡る騒動が起きた。
当然、祖母の名義となっていると思っていた屋敷の中で、祖母名義のものは、上物のみだった。
要するに、家屋のみだったのだ。
土地は、祖父の名義のままだった。
祖母の葬儀の後、母の元に乗り込んで来たのは、祖父であった男性の〝本当の〟親族達。
つまり、正規の相続人達。
祖父はとっくの昔に亡くなっており、その子、孫であった彼らは〝正当な相続人〟という法的事実を笠に着て、わたし達の生活基盤を崩しにかかった。
祖母は、名妓と呼ばれる誇り高き芸者だったという。
その、芸者としてのプライドを持って生きていた祖母を、祖父は見初め、引かせて見受けしたのだ。
祖母は祖父の家庭を壊そうとしたことなど一度もない。
慎ましやかに、誇り高く、女手一つで家を、家族を守って来た人だ。
それなのに、そんな女性に司法は少しも優しくなかった。
世の司法なんて、弱者の味方ではなかったのだ。
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