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全てを手離さなければならないのか、と困り果てていた母を助けてくれたのが、祖母のお弟子さんの一人だった女性弁護士だった。
彼女はクライアントである母の為に奔走し、集めた証拠を駆使し〝法〟を味方に闘ってくれた。
今、わたし達が安穏と暮らせるは、彼女のお蔭と言ってもいい。
わたしはあの時、世の中を律する筈の〝法〟は万人の味方ではないことを知った。
使いようによっては、弱者に刃を向けるものとなる。
人が人として人らしく生きる為のものの筈なのに。
けれど、母を救ってくれた弁護士先生が教えてくれた。
その〝法〟を、弱者を守る為の武器に出来るのは、弁護士なのだ、ということを。
わたしはあの時、絶対に弁護士になるって、決めたの。
わたしの人生の礎、柱はあの時に出来たの。
猛勉強の末、やっと司法試験に合格できたわたしが何より嬉しかったのは、玲さんと同じ土俵で仕事をする権利を得たこと。
これから、どんどんキャリアを重ねて行こう。
少しでも、玲さんに近づけるように。
そんな気持ちを胸に、弁護士としての一歩を踏み出していた。
☆
「菊乃、愛してるよ」
「あ……ぁんっん……」
玲さんの指が、スッと入ってくる感覚に、躰が震えた。
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