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「菊乃も、ほら、言って」
「……だめ、言えな……んん」
突き抜ける快感を逃そうとした口を玲さんに塞がれた。
舌がするりと滑り込む。
〝言え〟って言ったくせに――。
年の瀬の膨大な仕事量を普段と変わらないクールな表情で淡々ときっちり片づけた玲さんは、しっかりと休みを取り、わたしをイタリアはシチリア島まで連れてきてくれた。
東京の今時期とは違う温暖な陽気の、美しい地中海の風景を堪能し、歴史を刻みながらも洗練された街並みを作ってきたパレルモの街を見て歩いた。
夜は、玲さんに、シチリア在住の知人を紹介されて一緒に食事をしたりもした。
今晩は、イタリア最後の夜だった。
夜、ホテルの部屋に戻ったわたし達はベッドに直行。
キスをして、服を脱がされて――ワインの火照りが抜けきらない酔いと、快楽が溶け合う燃えるようなひと時を過ごした。
厚いカーテンの隙間から覗く月を玲さんの肩越しに時折見つめて、愛撫がもたらす快楽の泉に溺れていった。
ひとしきり肌を重ねて、ゆっくりと起き上がった玲さんがわたしを抱き上げた。
「菊乃」と囁くように呼びながら、玲さんはわたしの頬にそっと手を添えた。
心地よい体温と、頬に触れる少し冷たい手が芯まで痺れさせて、わたしは首を竦めた。
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