惑星グラリテ篇

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「…お…お前、誰だよ」 「俺か?…俺の名前はフェーム……お前と同じフェンリルだ」 明らかな体格の違いに驚きを隠せないザード また口をパックリと開ける だが、フェンリルの方では『亜種』と言われる黒いフェンリルが気になるようで… 「主に聞いたが…お前の一族の中に黒いフェンリルが居るとか」 前の世界に居たフェンリルを聞かれて、ザードは口の端を上げた 「なんだぁ?…出来損ないを聞いてどうするんだ?」 「『出来損ない』なぁ……そいつ、先祖返りじゃないのか?」 苦笑を浮かべて言うワードに、彼は頭を傾げる 「はあ?…何、言うんだ…先祖返りってなんだよ…俺達の一族はみんな白い…白が優秀なんだよ」 「俺は、昔黒かったが?…今の姿が白でも、元を辿れば違う色…黒だ……その上で『出来損ない』と言えるのか?」 「なんだと!?」 「まあ、いい……お前は世界征服をすると戯言を言ってるらしいが…その実力はあるのか?」 言いながら、フェンリルはノソリと立ち上がって人化魔法を使う 光を纏って現した姿は、黒一色の軍服姿に、マントの色も黒 「……な…えっ?……」 狼姿の時と違う人化の姿に驚きを浮かべた 「……どうした…構えろ……世界征服する実力を見てやるんだ…相応の力が無ければ、一つの国さえ征服なんか出来ないぞ」 「…ちょっ!…」 「…ちょっと待った、フェンリル…その役、俺に譲れ」 ザードの声とスェタナの声が重なった 「そいつは、俺が引き取るんだ……魔王の俺に相応しいかどうか見たいんだがよ」 王座に座る男にザードが顔を向ければ、男は継承の剣を抜いた 『魔王』と言うキーワードに、彼の体が震える この世界に来る前、向こうの『魔王』に散々打ち据えられた この魔王も同じかと思うと、気持ちが戦いてしまう 「あぁ…それも良いかもな………お前…言っておくが、こいつは俺より弱い」 『弱い』と聞いて、気が大きくなる こいつを倒せば、世界征服の第一歩になる ザードの顔に表れた面に、4人の男女は呆れた 「…馬鹿だねぇ」 「…愚か」 「…どうしようもねぇ、ガキだな」 「…主の言った通りだ」 上から女性・夫君・スェタナ・フェンリル それぞれの感想に、彼の顔が真っ赤になった 「うるさい!来ないなら、こっちから行くぞ!」 白い光を纏い、ザードの体が体高2㍍、体長3㍍の狼姿になった時、スェタナが吹いた 「ちっせぇ」 ここまで馬鹿にされたのは生まれて初めてで、魔王に突っ込むものの、簡単に躱されてしまう 4度5度と攻撃をかけるも悉く躱され、挙げ句の果て頬に打撃を食らい、悲鳴を上げ床に体を弾ませながら壁にぶつかった
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