惑星グラリテ篇

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「シュヴィとフェームは一応死の経験をしてるけど、私は『してない』……まあ、髪と目の色は変わったけどね」 肩を竦めながら軽く言う女性に、スェタナは溜め息を吐き、ザードは驚きを隠せず、又もや口をあんぐりと開ける 「魔王さん…貴方もそれぐらいは生きてるでしょ?」 「ああ…フェンリルの半分かな?……もう退屈で退屈で…部下は優秀に育ってるし、勇者が来ても適当に相手してすぐに退散してるし…あんな奴相手して、怪我はしても死ぬのは馬鹿らしい……だから、なかなか『死ねない』」 「うーん…『まともな勇者』が来てないって事か……勇者なんて魔法陣がランダムに召還するか…術者の思惑が入ってるかだし…まっ、大抵は罠に嵌めて殺すしかないしね」 いろいろな話が出ているのを聞き、夫君とフェンリルは頷くも、ザードは理解が追い付かないようだ 「何故だ?…何故、勇者を殺す必要があるんだ?…魔王を倒したんなら、英雄だろ?」 はああ…と長い溜め息を吐く4人の男女 「傲慢に自己中にプラスされてお馬鹿とは…魔王さん…徹底的に死なない程度に教育してよ…6億の間、いろんな夢を見てる筈…『魂の契約』を結んだんだから、貴方も今頃になって死にたくないでしょ?」 「あぁ…勿論だ……『徹底的に、この世界の常識』を叩き込む」 指を鳴らし、素晴らしい笑顔でザードを見るスェタナに、同じ笑みを浮かべる女性と夫君 フェンリルは生暖かい目で彼を見る 「お前が、もっとマシな奴なら、主も『くれ』とは言わなかったのにな…哀れ」 「えっ?…えっ?…えっ?」 「ォラヨッ!」 スェタナが、ザードの後ろ足を掴んで回転し、勢いをつけて手を離す 「わっ?…わっ!……わああああああ!」 迫る壁に、勢いを殺す様に体を回転させて着地した が、腹に打撃を受け、そのまま上に上がっていく 上がったと思えば、背中に衝撃を受けて、今度は下に下がっていった 彼等の周りには、誰も居ない フェンリルと男女の姿は既に無く、5時間後、スェタナの部下が2人を呼びに来るまで訓練は続いた 「ちょっと待て!このままじゃ死ぬ!」 「んな訳あるかぁ!てめぇには、打撃防御の魔法陣を張り付けてあるわぁ!」 【惑星グラリテ編】 終
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