カルテ19 双極性障害

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「鬱の時は、周りの人間も心配して必死にフォローしてくれるのですが、反対に躁の状態の時は、攻撃的になる方が多く、特に一番身近な人間を深く傷つけてしまう事が多いようです。 結果、周囲の人間もフォローをするのが難しいのです」  そこで一旦言葉を切った緒方君は、蓮さんの様子を窺っているようだった。 「お心当たりが、おありのようですね?」  胸がキュッと鳴くような、優しい声だった。 蓮さんの、嗚咽が聞こえる。 「もっと、早く気付けばよかった……」  悲嘆にくれた声音が、ここまでしっかりと届いた。 蓮さんの深い後悔と苦しみが空気を震わせて、カーテンを超えて恵果さんに届いた。 わたしの手の中にある恵果さんの手が小さく震えていた。  うつ向いたままの恵果さんの感情は分からない。  泣いているの?  怒っているの?  この、賭けといってもいいわたしと緒方君の作戦は、どちらに転ぶか。  早鐘を打つような鼓動がずっと続いてる。 祈るような気持ちで、緒方君に、全てを託す。 わたしは、こうして恵果さんの手を握っていることしか出来ない。  緒方君――。
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