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こんな、診察を他の人に聞かせるなんてこと、完全にルール違反。
でも緒方君は、このご法度を犯してまで二人をどうにかしようとしてくれたの。
恵果さんと蓮さんにとって、この行為が吉とでるか凶とでるか、それはわたしも緒方君も分からない。
さっきから治まることを知らないわたしの鼓動が、より加速して、つんのめりそうになっている。
「恵果さん……」
蓮さんを見つめて何も言わない恵果さんに、わたしは堪らず声を掛けた。
緒方君、何か話して、この場をどうにかして!
そう心の中で叫んだ時だ。
「わたしが、悪いの?」
恵果さんの硬い声にドキッとした。
何を、言い出すの? 不安がわたしの胸を占める。
緒方君に訴えるような視線を向けたけれど、緒方君は動かない。
それどころか、おろおろとするわたしを見て、口を動かした。
〝だ・ま・っ・て・み・て・て〟
黙って見てて?
こんな、今にも暴発しそうな恵果さんを? 黙って?
それじゃあ、これ以上険悪になったらどうするの?
緒方君に対する不安がむくむくと胸の中に湧き出した時。
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