112人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「話してくださって、ありがとうございます」
帰ろうと立ち上がった二人を見送るためにわたしもお礼を言いながら立ち上がった。
衝撃的な話を聞かされたわたしは、正直腰が抜けて立てないかも、と思ったけれど、今立ってみて、大丈夫だった。
「そういえば近藤さん」
ふと思い出した事があってわたしは、先にテーブルから離れて恵果さんに手を貸す蓮さんに話しかけた。
蓮さんは、はい? とわたしを見た。
「今はとても落ち着いてらっしゃるように見えるけれど、調子はいかがですか」
心の状態を、それとなく聞いた。
言葉通り、今の蓮さんはとても穏やかで、すっきりした印象を受ける。
言葉を交わしていて不安もなさそう。
蓮さんはニッコリと笑った。
「緒方先生があの後、とてもよく診てくださって、薬をちゃんと調整して処方してくださりました」
緒方君の名前に、ちょっと胸が痛んだ。
胸にある彼の残像に、思わず縋ってしまう。
会いたい。
緒方君。
最初のコメントを投稿しよう!