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巧くかわして笑いに変えるような気の利いた返しが直ぐに浮かばなかった。
まだドキドキしている。
玲さんの気持ち、どこまで本気か、わたし分からない。
黙り込んでしまったわたしに玲さん、クスリと笑った。
「蛍は、宵の口で見られる。
お泊りを心配するほどの事はない」
わたしは思わず。
「あ」
間抜けな声を出してしまった。
やだ、何を先走ってたんだろう。
玲さんが、クスクスと笑っている。
わたしの体温が、急激に上がる。
「笑わないで」
「いや、菊乃がそこまで考えてくれたんなら、僕は構わない、と思って」
「考えてません!」
アハハと笑った玲さんの手を振りほどいて、肩を叩こうとしたら、手首をぐっと掴まれてしまった。
「怒るなって」
「怒ってないわ。
ちょっと、恥ずかしかっただけよ」
俯いてしまったわたしの手は、また玲さんに握られてしまった。
寄り添おうと近づいて来る心からわたしは逃げなければいけないのに。
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