カルテ25 椿山荘

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 開け放たれた大きな窓からは、外の熱気が一気に流れ込んできた。 時折吹き込む風はもはや熱風。 「当然でしょう、もう昼になるのよ。 いい年をした娘が二日酔いで昼までゴロゴロなんてみっともない。 さっさと起きて、お稽古場の雑巾がけでもしてちょうだい!」  母はとんでもない言いつけを残して部屋から出て行った。  いい年した娘が二日酔いなんて、と言いますけどね、いい年した女だから二日酔いにもなるのよ。 二日酔いになるくらい呑みたい事があるの。  部屋から出て行った母に、心の中で毒づいてみるも、ちょっぴり空しくなって、わたしは仕方なくベッドからのろのろとおりた。  まだ頭痛の残る頭を押さえながら、伸びをしてぼんやりと外を見やった。  庭の青々と茂る木々は真夏の光線を受けて輝き、賑やかなセミの鳴き声が暑さを倍増させていた。  暑苦しさを少しでも凌ごうと、とりあえずセミの大合唱を遮る為にカーテンを閉めて、少し考えて、わたしはバッグから携帯を取り出した。  LINEを開き、タイムラインを確認する。 そこに、千尋の書き込みがあった。 友人の多い千尋はフライト前は必ずタイムラインで報告するようにしている。 『これから、フライトです』  首にスカーフを巻いた自撮りの顔写真と共に添えられたメッセージが書き込まれたのは昨日。
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