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玲さんはお父様が元外交官で外国生活が長い。
特に長く過ごしたという紳士の国イギリスで、玲さんはこういう所作を自然に身に着けたんだと思う。
差し出された手に自分の手を乗せ、わたしは玲さんに促されて車から降りた。
エレベーターで地上に出ると、華やかな服装の若い女性達で賑わい、豪華なシャンデリアと大理石の広いフロアは花が咲いたようだった。
スーツ姿の男性たちの姿もその中に混じっている。
そうか、今日は祝日だから、結婚式があったのね。
ここはホテル、というより少しばかり格式の高い結婚式場として有名だった。
今日は祝日だから、結婚式があったのね。
結婚式……。ふっと胸が重くなった。
玲さんとあのまま結婚していたら、わたしは今どうしていたのだろう。
そんな事を考えていたわたしの肩を、玲さんがそっと抱いた。
「庭に出てみないか」
「庭?」
玲さんに促されてフロアの奥へと視線を向けると大きなガラス窓の向こうに緑豊かな立派な庭園が拡がっていた。
「春頃、ドイツから来た客をここに泊めて、庭を案内したんだ。
その時中々好評だったんだよ。
それで今日、菊乃をどこに連れて行こうか、と考えた時に真っ先にここを思い出したんだ」
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