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わたしは緒方君の胸に顔をピタリと寄せて目を閉じ、話しを聞いた。
「本当は気が気じゃなかったけど、君は、自分の強い意志を持っている女性だ。
生きる道は自分で選択して、そこに決して悔いなんて残さない女性なんだ。
だから、君の選ぶ方に、僕は賭けたんだ」
静かだったけれど、とても強くてしっかりとした声だった。
わたしは目を閉じたまま、その言葉に応える。
「わたしは、緒方君以外考えられなかったから」
再会したあの日から、運命は決まっていたのかもしれない。
わたしは、この人に出会う為に――、
「緒方君?」
わたしを抱く緒方君の腕に、力が込められた。
わたしの中に、緒方君の言葉が入ってくる、浸透する。
「君は、僕専属の、ハート診療室だ」
緒方君の胸に手を突いて顔を上げたわたしは肩を竦めてフフッと笑った。
愛しい人の顔を両手で触れて、言う。
「はーと診療室へ、ようこそ――」
END
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