一章 人形師と小間使い、そして魔術師ー1

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一章 人形師と小間使い、そして魔術師ー1

1 ある朝のことでした。 お城の王さまから、ご主人さまのもとへ使者が来ました。 ご主人さまは評判のいい人形師です。 なので、お姫さまのために人形を作らせようというのでした。 「ご主人さまぁ。王さまがお呼びですよ。お迎えの馬車で、お城に来てほしいんだそうです」 使者のご用向きを伝えに行くと、ご主人さまは、おびえた猫のようにベッドにかけあがり、ふとんを頭からかぶってしまいました。 「いやだ! 行かない。僕は行かないよ! 行ったらギロチンが待ってるんだ。縛り首なんだ。なわで落とされて首を縛られるんだ!」 シャルランは、ため息をつきました。 あっ、シャルランっていうのが、あたしの名前です。 ご主人さまにお仕えする召使いです。 「ご主人さまぁ。それを言うなら、なわで縛られて首を落とされるですよぉ」 「そんなの、どっちでもいいよ。僕は行かないから。殺されるっ! ギロチンだ! 火焙りだ!」 「…………」 いきなり、すいません。 見苦しいところをお見せしました。 でも、どうか、ゆるしてあげてくださいね。     
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