一章 人形師と小間使い、そして魔術師ー1

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ここ二、三百年のあいだ、世間で魔女狩りなんてものが流行っちゃって、不思議な力を持つご主人さまは、世間の迫害をもろにかぶっちゃったんですよね。 今じゃ、すっかり、ひきこもりになってしまったのでございます。 お優しくて、優雅で、たいそうお美しいご主人さまなんですけどねぇ。ちょっと繊細(せんさい)すぎて、打たれ弱いのが難でございます。 シャルランがお守りせねば、一日たりと生きていけないでしょう。 「ご主人さまぁ。魔女狩りの時代は終わったんですってばぁ。今はまた占いや、おまじないがブーム! 神秘主義到来なんですよぉ。だから、お城に行っても殺されませんよ」 あたしは、えいやっと勢いよく、ふとんをひっぱがしました。 おおっ、まぶしい! 光り輝いております。 透きとおるように白い肌。 紫水晶の瞳。黎明(れいめい)の空のように、深く澄んだブルーの髪。 その面差しは、そこらの美女など及びもつかないほどの麗しさです、はい。 これが、シャルラン自慢のご主人さま。ビュリオラさまです。 お美しいのは、それもそのはず。 じつは、ここだけの話。 ご主人さまは、青い薔薇の精なんですよ。 え? あたし? あたしは、ただのみなしごの人間です。 小さいころ、ご主人さまにひろわれて、育ててもらいました。 いえいえ、あたしのことなんて、どうでもいいんです。     
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