一章 人形師と小間使い、そして魔術師ー1

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ご主人さまのほうが、ぐんと複雑な設定の持ちぬしですからね。 ご主人さまの種族は、大昔、ミダス族と呼ばれていました。 ほんとは花の精なんですが、人間たちには、その不思議な力が、神話に出てくる王さまを連想させたんですね。さわったものが、すべて黄金に変わるって王さまです。 それで、ミダスなんて呼ばれていました。 ご主人さまの一族は、黄金ではないけれど、それに匹敵するくらい、人間にとって魅力的な力を持っていたので、狙われて狩られていたんです。 おかげで、ご主人さまの種族は激減しました。 ご主人さまは(たぶん)一族最後の生き残りではないかと思います。 そのせいもあって、こんな被害妄想になっちゃったんですけど……ほんとは気高いかたなんですよ? ほんと。ウソじゃないんですぅ……。 「ご主人さまぁ。誰も、ご主人さまをいじめませんから、お城に行きましょうよ。王さまのお迎えをたたきかえしたほうが、恨まれるんじゃないかなぁって、シャルランは思います」 ご主人さまは涙ぐんで、あたしの手から、ふとんをうばいかえそうとしました。 でも、残念。ご主人さまは、かよわい花の精なので、とっても非力! 力で、シャルランにかなうはずなんてありません。 ご主人さまは、ふとんをあきらめて背中をむけました。     
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