第1章 狼と山羊

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 海に面した、人口30万人程度の碧海(あおみ)市。この市にある亜弍丸(アニマル)高校には、10年以上続く不良グループがある。『ZOO』と名乗る彼らは、それぞれのメンバーが動物をモチーフにしたパーカーを身に纏い、近隣の学校と日々縄張り争いを繰り返していた。 亜弍丸高校からほど近い商店街の片隅、広間になっているアーケードの一角。ガラス張りの天井から、冬とは思えないほどの温かい日差しが降り注いでいる。  そんな穏やかな商店街の雰囲気は、荒々しい怒鳴り声にかき消された。 「この野郎!」 「ぶっ殺す!」  ドタドタと無遠慮な靴音を響かせながら、4,5人の高校生と、囲まれている2人の高校生が喧嘩をしていた。彼らが取り囲んでいるのは、狼パーカーの背の高い高校生と、山羊パーカーの高校生だ。狼パーカーの方は、向かってくる高校生の一人をカウンターで沈めると、隣に突っ立っていた別の高校生を蹴り倒す。圧倒的な強さで相手をなぎ倒していくその狼パーカーの高校生の背後に、敵の拳が迫った。 「死ねコラ!」 「!」  気付いた時にはよけきれない距離になっていたその拳が、パシリと山羊パーカーの高校生に受け止められた。 「あぶねぇな」
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