第4章 狼の気持ち

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やがて、狼煙間の手は、矢木の首筋辺りを這い始めた。 「ぅ!」 ゾクゾクと背中を何かが這い上り、矢木は慌てて狼煙間の手を押さえる。 「く、首はダメだ!」 「あ?」 「首だけは弱えぇんだよ、俺は! だから、やめろって……」 「弱いって何だよ」 矢木の言葉はむしろ狼煙間を煽ってしまったようで、狼煙間は面白がって首を狙い始める。 「だ、ダメって言ってんだろ……っ!」 矢木の抵抗を抑え込み、狼煙間は執拗に矢木の首をスポンジでさする。狼煙間に後ろから抱き抱えられるような格好になり、更に首を責められ、矢木は眉をハの字に曲げ、哀れに悶えた。 「っ……! ん……!」 矢木は拳を握りしめ、涙目になって震えた。情けない声を上げるわけにはいかない。しかし、このままではそれも時間の問題だった。 「い……いい加減にしろ!」 矢木は、とうとう狼煙間を突き飛ばし、風呂場から出て行く。 「つ……」 浴槽の縁に頭をぶつけた狼煙間は、痛みに顔をしかめながら、矢木が出て行った方を睨んだ。
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