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(何で……こんな事……)
矢木は涙で頬を濡らしながら、怒りに震える。
(俺の事……馬鹿にしてんのかよ……!)
矢木は、狼煙間の顔を苦々しそうに睨み、歯を食いしばる。
「……やめろ、狼煙間!」
「黙ってろ」
狼煙間は、まともに取り合う気がないようで、動きを止める気配もない。しかし、矢木は狼煙間の胸倉をつかみ、狼煙間を引きはがした。
「やめろって言ってんだ!」
「……」
狼煙間は、ようやく矢木の目を見つめて、動きを止めた。矢木は目に強い怒りを込め、狼煙間を睨む。
「同情して俺を分かったつもりか?」
「……あ?」
「お情けで抱いてやったら、俺が喜ぶとでも思ってんのかよ!」
「……」
狼煙間は、不機嫌そうに矢木を睨み、口を引き結ぶ。矢木は、肯定の沈黙と受け取って、そのまままくしたてた。
「同情なんていらねぇ! こんなん馬鹿にされてんのと同じじゃねぇか! ……お前が俺の事好きでもないのに、こんなんしたって意味ねぇんだよ!」
矢木はひとしきり感情的に喚くと、さらに自分が情けなくみじめになったように思えて、苦しそうに口を閉じた。
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