第4章 狼の気持ち

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「おい、聞いてんのかテメェ」 狼煙間は反応がない矢木の頬を、ぺシぺシ叩いてくる。痛い。狼煙間は、呆れたように矢木を離すと、身を起こした。 「大体、気付くのが遅ぇんだ、お前は。俺はずっと分かってたぞ」 「!」 「俺はお前の事嫌いじゃなかった。あの時も」  あの、矢木の部屋でのことだ。 「……」 「お前なら嫌じゃないと思ったから、何も言わなかった」 「!」 矢木は瞠目し、見る見るうちに真っ赤になった。狼煙間はそんな矢木を見下ろし、かすかに口の端を上げる。 「でも、お前はいつもそういう空気を避けてただろ。……これでも我慢してやってたんだよ、俺は」 狼煙間は、偉いだろうとでも言わんばかりのドヤ顔だ。矢木は、なんだよ、と小さく呟いて、浅く息をついた。 「……はは……、ほんと、馬鹿みたいだな」 矢木は安堵の涙をこぼし、そうか、と心の中で呟いた。ずっと胸の所にのしかかっていた重りが、フッと消えたようだった。 「俺……お前の事、好きでいいんだな……」 「あぁ」 「……」
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