第4章 狼の気持ち

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矢木は穏やかなため息をつき、目を瞑った。矢木の安心したような様子を確認すると、狼煙間は、ようやく本題だ、と言うように矢木の顔の横に両手を突いた。 「……じゃあ、これで問題ないな、矢木」 狼煙間は、どこか嬉しそうな声音で確認する。 「……? ……なにが?」  矢木はキョトンとして狼煙間の言葉の意味を量った。狼煙間は、さも嬉しそうに言葉を付け加える。 「お前を抱く事だ」 「!」 狼煙間は矢木の両腕を頭の横に押さえつけると、悠然とほほ笑んだ。 「……だ、抱く……って……」 「言っただろ。“俺はお前を抱きたい”」 狼煙間の言葉に矢木は耳まで真っ赤になって、情けなく眉尻を下げる。 「なっ、何で俺が下って決まってんだ!」 「決まるも何も、当たり前だろ」 「ちょ、ふざけん……うぁ……!」 狼煙間は、もがく矢木の首筋を舐め上げ、矢木は思わず声を上げる。 「ま、待て、狼煙間! 冷静に話し合おう……な!」 「一人で言ってろ。俺は忙しい」 「っ、ぅぅ!」  矢木がどうあがいても、狼煙間は一向に退く気配がなかった。
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