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「じいさんの名にかけてなのか、ええと、見た目は大人、頭脳は子供でしたっけ? 月定邦雄は、そんなフレーズの職業だと噂で聞いているんですが、図書室の眠り猫シキちゃんが動くそうなので、動かしてください。私が捕らえます」
「それ、色々と間違っているが、最後は、一休さんかよ! って突っ込むべきなのか?」
校舎の屋上でのんびりとくつろいでいた俺に声をかけてきたのは、近くにある茜色八幡神社の神主の娘で、よく巫女をやっている錦屋いなり《にしきや いなり》であった。
中学の時、俺が探偵だなんだと言われるようになった要因ともなった『白ワニ事件』に関わっていた一人であるので、いなりは俺の事を都合の良いときだけ『探偵』と呼ぶ。
『白ワニ事件』は俺が中学一年の時に起こった事件で、当事者は後味が悪すぎて誰も語りたがらない事件だったりする。当然俺も語る気はない。
語れと言われれば、語るかもしれない。
野生のワニの群れに白いワニが産まれると、敵対するワニの群れの中にその白ワニを放り込むのだそうだ。そうすると、目立つために、白いワニは敵対する群れの総攻撃に遭う。白いワニが襲われている最中に、白いワニを放った群れが敵対する群れの縄張りを奪っていく、という話があるのだが、そういった概要の事件だったとだけ言っておく。
「わざとぼけてみましたので不要です」
いなりはにっこりと微笑んで、やんわりと俺の突っ込みをかわした。
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