第二話 シキが鳴いたという四つの証言

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第二話 シキが鳴いたという四つの証言

 放課後、有無を言わせぬいなりに従うように、話題の図書室へと二人で行くこととなった。  俺といなりは並んで歩いて図書館へと向かった。  いなりとこういうふうに並んで歩くのは初めてであったのだが新鮮ではあった。しかし、白ワニ事件の関係者である以上、気が置けないところがあるのが難点ではある。 「これは図書室で猫の声を聞いたという人の証言なのですが……」  いなりはそう前置きをして、学校指定のバッグの中から用意周到とばかりに一冊のノートを取り出した。  何のノートだろうかと詮索しながら見ていると、いなりはとあるページを開き、朗読し始めた。 「これは高等部三年生のU・Dさんの証言です」 「……証言? 何のだ?」 「シキちゃんの鳴き声を聞いたという証言です。今のところ、四人から証言が取れているのです」 「とりあえず聞いてみよう」  いなりは取材までしたのかと関心しながら、その証言とやらに耳に傾けた。 「今みたいな放課後の話なのです。U・Dさんは大学受験の勉強があるからと図書室へと行き、自習したのだそうです。そうして、しばらく自習していると何か妙な気配がしたというのです。何かが蠢いている、そんな気配だったのです。気になりだして、勉強が手に付かなくなり、図書室の中を見える範囲で見回したのですが、これといっておかしいところはなかったそうです。その時に『にゃ~お』とい猫の鳴き声が聞こえたそうなのです。猫?と思って、U・Dさんは図書室をもう一度見回してみたのですが、猫なんて当然そこにはいませんでした。U・Dさんの証言は以上です」 「そいつは、なんで眠り猫シキが鳴いたって思ったんだ?」  シキが鳴いたのを偶然見たのならば話は別だが、今の証言だとシキが鳴いている事を見ておらず、あくまでも憶測で物を語っている。その人物はシキの置物さえ見ていないのだから、証言として信憑性があるかと言えば、そうでもない。 「シキちゃんが鳴くっていう噂を耳にしてから、あの鳴き声はシキのだったのか! って思ったそうですよ」 「こじつけの可能性もあるって事か」 「かもですね」  いなりはこの証言をあまり信用していないのか、否定的な見方をしている言葉を選んでいた。  端からシキが動くのを否定したいだけかもしれない。
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