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ダルタニャンがそう言って叱ると、ルイ十四世はビクッとなり、黙ってしまった。
二十七歳のルイ十四世は、先代の国王の時代からフランス王家に忠実に仕えてくれていて、親子ほど年齢が離れているダルタニャンには頭が上がらないのだ。
「……と、とにかく、オレはいそがしいのだ。小娘に会っているヒマなんてない」
そう弱々しく言うと、ルイ十四世は玉座から立ち上がり、謁見の間から出て行こうとした。
「王様、どちらへ?」
「シャトレ要塞で兵士たちの訓練を行なう時間だ」
「それなら、私もお供いたしましょう」
「い……いい! ダルタニャンは、今日の昼過ぎにヴァル・ド・グラース教会に来るように母上に言われているのだろう?」
六十五歳のアンヌは、若かった頃に自分や夫の先代国王に仕えてくれた家来、友人たちが寿命で次々とこの世を去り、近頃はとてもさびしがっているのだ。だから、自分が「若くてお美しい王妃様」と呼ばれていた時代を知っている数少ない家来であるダルタニャンを毎日のように呼び、思い出話をしているのである。
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