国王、お菓子をネズミに食べられる

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「おまえが来てくれるのを母上も今か今かと楽しみにしているだろう。早く行ってやってくれ」  そう言うと、ルイ十四世はそそくさと謁見の間を後にした。 (そんなに母親のことが心配なら、たまには顔を見せてあげればいいのに。どうせ、アンヌ様に虫歯のことで小言を言われるのが嫌なのだろう。二十七歳にもなって、まだまだ子どもっぽいところがあるおかただ……)  ダルタニャンはため息をつきながら、心の中でそうぼやいた。  ルイ十四世は、食べ物の好き嫌いが多いくせしてものすごい食いしん坊で、三百人以上のコックを雇い、毎日ぜいたくな食事をしていた。そのせいで、虫歯になりやすく、アンヌからは、 「暴飲暴食はいけません! 体をこわしてしまうし、虫歯になるたびに歯をぬいていたら歯が全部無くなってしまいます! 特に甘い物の食べ過ぎはいけません!」  などと、顔を合わせるたびに叱られていたのである。
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