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国王、お菓子をネズミに食べられる
この当時、フランス国王の宮殿は、まだあの有名なヴェルサイユ宮殿ではなく、パレ・ロワイヤルという名の宮殿だった。
国王であるルイ十四世は、この日、そのパレ・ロワイヤルの謁見の間で銃士隊の隊長ダルタニャンからおどろくべき報告を受けていた。
「オルレアン公ガストンの娘がパリに来ているだと……?」
五年ほど前に亡くなった叔父のガストンのことを思い出し、ルイ十四世は「うげっ」と声に出して嫌な顔をした。
ガストンは、ルイ十四世の父である先代の国王ルイ十三世の弟なのだが、若い頃から兄のルイ十三世に反抗的で、自分が兄をやっつけて国王になろうとたくらんだことも何度かある人物だったのである。フランスの王家では問題児あつかいされていた。
ルイ十三世が死んだ後、幼くして王となったルイ十四世を補佐していたマザランという大臣がガストンをパリから追い出し、ケンカ相手である兄を失ってから元気を無くしていたガストンは、その後はずっと領地のブロワで大人しくしていたのである。そして、五年前に病死したのだが……。
「母上がガストンの遺族たちのことを心配し、仕送りを毎月送っていたことは知っている。マリーというガストンの娘と以前から手紙のやりとりをしていたことも……。だが、ガストンの娘がなんで今さらパリにのこのことやって来たのだ? あの娘の父親は、わが父の敵だった男だぞ?」
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