本編

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「東京はおいしいものがたくさんあるね」  僕は母の手料理から離れ偏食ばかりをして、以前よりも豊かな見た目になっている。今であれば上着の一枚や二枚、減らしても風に吹き飛ばされないのではないか。日が暖かいのでダウンジャケットを脱いでみる。 「ここでなくたって、たくさんあるよ」  彼女はSNSで紹介されている東北の揚げもの屋の情報を僕に見せながら「いつか行こうと思う」と微笑んだ。  インターネットにテレビに、と僕らは便利なもので囲まれている。その場へ足を運ばなくとも、その土地の情報を得ることができる世の中。けれども僕はここへ来るまで、グルメ番組は見ないようにしていた。「どうせ遠いのだから」と諦めていたんだ。
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