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アイリスは、気付けばそれに恐る恐る……舌を絡ませて応えようとしていた。いかにも不慣れで、拙い、まるでどうしたら良いのか分からなくなった迷子を誘うように、コーウェンが彼女を愛でる。
(何これ……さっきより……気持ち、いい?)
初めて自分から求めたそれは、先程の、戸惑いの中で感じたものよりも、もっと確かな情を含んでいた。
今、それが何なのか、考えられる余裕は当然無い。
ただ、彼から与えられる感覚は、アイリスの想像していたよりもずっと淫靡で官能的なものだったが、コーウェンは口では色々と言いながら、ひたすらにアイリスに触れるその手も唇も、優しかった。
与えられるその甘い感覚に頭がくらくらするのに、微かに漏れる彼の吐息も、柔らかな唇の感触も逃し難く感じて、自分から追い縋る。
当初、彼の鼻を明かしてやろうと考えたことなど、もうどうでも良くなっていた。
いや、良くは無い。良くは無いのだけれど。
「もっと……」
気付けば、癖になるくらいの甘い痺れを齎して、頭の中がぼんやりするほど気持ちいいその行為を、アイリスははしたないと頭の端で思いながら、強請っていた。
コーウェンが目元を緩めて僅かに笑ったように見える。
「……心配しなくても、気持ちよくしてやる」
「あ……」
暗い森の中、アイリスはコーウェンの顔と向かい合い、腰の上に乗り上げる。
(硬い身体……)
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