第2章 宵ノ口

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「ーーーここだ」 目隠しをされ、何かに乗せられ、たどり着いた先は、民家の様な所だった。 「勘違いだけはしないでくれよ。お前は元殺人鬼の一兵士だ。特別扱いはしないし、それこそ奴隷として扱う。」 姿より声の方が先に出会うというのは、中々いい出会いでは無い。 「俺は龍皮l《たつかわ》お前の隊の隊長だ。お前の隊は特攻隊だからな。俺のいう事は聞いてもらう」 「・・・わかった」 龍皮。茶髪を短く刈り上げ、深い緑の迷彩柄を纏う出で立ちは、さながら今すぐにでもサバイバルゲームを始めそうな程だ。 「ハハハ!!君もいいねぇ、香りがするよ。墜ちた者にしか懐かない、血の匂いさ!」 金髪を風に揺らし、囚人服をはらませる少年が言う。岩の上に座って、豪快に林檎を歯で抉り取っている。 「君も『一人』か?よろしくな少年!」 童顔にはめ込まれた青碧の単眼を瞬かせ、顔の左半分を覆う髪を揺らす。とても囚人とは思えないが、その思考は纏う服に打ち消される。 「俺はアキト・・・お前は?」 「おっと!俺は人にそう簡単に情報をあげないね!このカイト、他の馬鹿とは違うんだよね!」 「カイトか」 「・・・おっとそりゃ違うぜ・・・俺は・・・えと・・・」 「・・・・・」 「とっとにかく!よろしくな!俺も一応生き残ったんだぜ!?」 そう言い終わるや否やカイトは、逃げる様に走り去っていった。いや逃げた。 辺りには、ぽつりぽつりと確かに人がいる。こいつらみんな、それぞれの刑務所 l《ダンジョン》を乗り越えてきた生き残りなのか。そいつらが集められりゃあ、確かに軍の一つも出来る。市民にも迷惑はかからない。戦争にはもってこいってわけか。 「静かにしていろ。放送が流れるぞ」 『この基地は、一般の者が出入りできるようになって4日目である。4日目にしてこれだけの人が集まった事は讃えよう。しかし、お前らは犯罪者であり、兵だ。 お前らは今日から、日本の軍の一人として、相手軍と戦ってもらう。まず、相手軍の発表である。まず特攻隊ーーーーーa隊。キュウガ。ササキ。グカイーーーー ーーーーーーーイタリア軍。ーーーーb隊。ヒスイ。イイガ。イノーーーーーードイツ軍。 ーーーーーーー以上で発表を終了する。健闘を祈る!』 敬礼。見よう見まねでやる。タイミングは完全に遅れたが。
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