第2章 宵ノ口

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「おーーーーーい!!」 ん? 「俺だよ俺!カイト!ねぇ何隊?俺はb!」 「…分からない。ーー自分の苗字を忘れた」 「えーーーーあった。君は、悲水 亜希斗、ひすい、あきと。じゃあb隊だ!やった!俺と同じ!!」 「カイト・・・これ何?」 「履歴書だって。隊長からもらった」 あれから、カイトがーーちょっとまってて!すぐ戻る!!ーーと言い、十分もせず戻ってきたその手にあったのは、履歴書、というらしい紙。気持ち悪いぐらい俺の事が詳しく書かれていて、俺の本名はそれでわかった。長いこと呼ばれなさすぎて分からなかった。 「あ、ちなみに俺は 祈 魁斗。カイトでいいよ!」 「・・・しかし、何で俺がb隊だと分かったんだ?」 「へっへー。俺、昔っから記憶力だけはいいんだ。覚えてないこととか、俺はだいたい覚えてるから聞いてよね!」 「・・・わかった。ありがとう」 祈、魁斗・・・どこかで、・・・? 深く掘られて行く思考にかける声。 『ーーー緊急収集。a、b隊。食堂まで』 (ーーーーなんだ?初日から呼び出しとは) 集まっている奴らも、どこか不満そうな、浮かない顔だ。 集まった兵の前に立ったのは、龍皮隊長だった。 「ーーー皆、急に済まないな。突然だが、今日の夜にアメリカ軍との親睦会がある。この後時計を全部屋に掛けに行くから、8時になるまでに、この食堂に集まってくれ。いつどこに敵がいるかも、スパイがいるかもわからないんだ。では、気をつけて生活し、また、いつでも出兵出来るようにしておいてくれ。以上だ」 「ーーそれだけのために収集したのか?」 「放送でもいいだろうに」 「いや、少しでも聞く人数を減らし、スパイとやらに伝わる確率を下げるためだろう」 そんな会話が嫌でも入ってくる。 「ーーいやー、こういうのって物語とかだと、俺が主人公ならアキトが、アキトが主人公なら俺がスパイってオチだよね?まぁあるあるネタすぎて笑っちゃうけど!」 ハハハハハッ、と呑気に笑うカイト。俺もこいつを疑う気は無い。なんというか、こいつじゃあない、と本能が全身に言う。スパイだと思えば、全身に否定される。そんな感じだ。違和感がそうさせるのか。 「部屋はどこだろうな?。ーーあ、ドアに名前が書いてある。隊ごとにまとまってるのかな?」 「そうみたいだな・・・お、これか・・・?」 『悲水・祈・林芽』
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