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義治さんも草津さんも警察官の仕事で、怪我をしたことがあるので、今朝は、やっぱり、私と同じで疼いていたそうです。
野々村さんは弱そうなのに、意外に大怪我は無いみたいで、話についていけない様子でした。
むしろ、私の傷の原因がレディース時代のモノだと知って、ちょっと引いてました。
そんなに、珍しいことでもない気がするのですが…。
帰る頃には、雨は止んでいて綺麗な夕陽が出ていました。
手を繋いで義治さんと散歩をする。
茜色の夕陽は、義治さんから貰った番傘みたいだとか、草木に輝く露は浴衣の水玉みたいだとか。
ひさしから流れ落ちる雨音で義治さんの趣味を思い出して、それから浴衣を引っ張り出したとか。
そんな、くだらない今日の出来事を話していました。
口数の少ない義治さんは「あぁ」とか「そうか」とか、相変わらずの相槌でしたが、急にフッと口元が緩むのが分かりました。
何かと思って聞いてみると
「連想ゲームのようだな」
と笑ってくれました。
たしかに、今日は連想ゲームのような一日だった。
でも、私が連想する先には、いつだって義治さんがいる。
そのことを言えば、やっぱり「そうか」と簡素で柔らかな口調の相槌だけでした。
だけど、その一言だけでも私への思いが詰まっていることくらい、分かってるんですからね、義治さん。
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