ベタな雨の日で申し訳ありません。

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そんな見た目も、かけ声も、弱そうな野々村さんの雄叫びが聞こえた後。 すぐにバチーンという音と、ドターッという音が聞こえました。 竹刀で、はたかれた挙げ句、吹っ飛ばされて尻餅をついたのでしょうか? 番傘を畳んで傘立てに入れて、部屋にソッと中を覗いてみた。 「一本。つーか、野々村は弱すぎだな」 審判をしていたのは、草津さんでした。 義治さんの元同僚の方です。 私以外で、表情が読みにくい義治さんの考えを、顔を見ただけで分かる唯一の人です。 「先輩達が強すぎるんですよー」 やっぱり、尻餅をついて、いまだに立ち上がろうとしないのは、野々村さんでした。 強すぎる! とかイジメだ! とか駄々をこねている姿は、十代の学生のようにしか見えない。これで二十七歳というのだから、警察官より詐欺師の方が向いているのではないかと思う時があります。 「紫央」 静かに、はっきりと私の名前を呼ぶのは、義治さん。 野々村さんの前で竹刀を持って、姿勢良く立っている。 顔だけを私に向けて、純粋に何故、私がいるのか分からない。という顔をしていました。 私は、義治さんの驚いた顔を見れて、得した気分です。 いうなれば、スーパーへ買い物に行った時の野菜特売みたいな感じです。 義治さんにニッコリと笑って見せて、顔部分だけ覗かせていたのを体全体、というより浴衣を見せびらかすように道場の中に入った。 「退屈だったので、お迎えに上がりました」 冗談めかしていうと「そうか」と気の抜けたような返事をされました。 また、私が何か事件に巻き込まれたのかと思ったのかもしれません。
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