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ストーカー事件のことだけでなく、レディースだったこともあるから、義治さんの中では、私=事件みたいな条件反射があるのかもしれない。
ちょっと複雑な気分です。
否定出来ないのですが……。
普段は、人に表情が読まれにくい義治さんだけど、さすがに肩の力が抜けたのが野々村さんにも分かったみたいです。
尻餅をついていた体をパッと起こして
「すきありー!」
とドタドタ、義治さんに向かって行く。
野々村さんが、一歩踏み出した時点で義治さんの顔付きがキッと鋭くなったので、隙もへったくれも無いのですが。
案の定、野々村さんは、義治さんの手によって(しかも今度は竹刀では無く、懐に潜り込んでの一本背負いだった)見事に返り討ちにされました。
「技あり一本」
と当然だと言わんばかりの草津さんの声が響いて、確かにイジメかもしれない。と野々村さんが少し可哀想になりました。
ピッと、さして崩れていない胴着を正した義治さんを見て格好いいとも思ったけど。
完全にノビていた野々村さんが目を覚ました頃、道場にあったお茶を入れて、ひと休みして貰いました。
「それより今日って、どっかで祭りでもあったっけ?」
野々村さんが、持参したお饅頭を頬張りながら喋る。
道場の床にポロポロと欠片が落ちていく。
後で掃除をしなくちゃと、なんだかデジャヴする。
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