一つの転機

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「何処言ってたんや?」そう尋ねると 「ただの人探しだよ、ものを落とした人の」 そう返された その事実に唯々驚き 「いや、珍しいと思ったからな、他人と積極的に関わろうとするのは」と言う そう、そんな事は今まで無かった 「珍しい」では無く「初めて」だ 他人と関わり大切な物をつくってしまいそれを失ってしまう事を恐れている 少なくとも自分はそうだと思っている 西上は少し考え、少しだけ間を空けたあと 小さく「……そうだな」と呟く その顔は俯いていて良く見えなかった 暫くどちらとも口を開くことは無かった その沈黙を破ったのはチャイムの音 取り敢えず話を聞く必要が有りそうだ 「昼休み教えろよ!」と約束を取り付け授業の用意をして、授業に入る 次の授業は…うへぇ、と言う言葉が漏れてしまうほどには苦手なものだ。 教科としては苦手ではないのだが… 教師が苦手なのである 新任の教師授業熱心であるが為… 寝れないのだ!寝たらやばい! そう本能に刻まれている 1回目は笑って起こす 2回目は咎めるように怒りながら起こす 3回目は…ニッコリと笑い放課後に呼び出され 反省文とその日の授業のプリントを個室で 黙々と解かされる、その間、目の前で先生は仕事をしている。気まずい事この上ない 自分は実験台にされた、つまり見せしめだったのだろう。そして自分は警戒されている つまり寝たらダイレクト第3フェイズまで飛ぶ可能性が有る。その為この授業中は寝てる人は居ない と言っても、今は寝ようとは思わんが 授業を聞きながら合間合間に考える 西上が何故わざわざ落し物を自分で届けに行こうとしてるんや? そこまで動かさせる物、落とした人ってなんや? そんな疑問を考えていると 「そこ授業ちゃんと聞いてる?」ビクッとして その言葉が自分では無く西上の方に向いていると知ると安心すると同時に、普段サボらない彼が注意されていることに驚かざるをえなかった 注意は軽くで済まされたようだ 自分も注意されないようにとりあえず考えを辞め授業にしっかり取り組むのだった
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