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「もう疲れた、別れようか」
年月を経て気持ちも形を変えた。
昔の熱い情熱はない。
「そうか」
たった三文字の短い返事。
貴方も切り出すタイミングを待っていたのだろう。
涙がはらはらと落ちる、枯れたはずの涙がこぼれる。
指先でその涙を優しく拭われた。
「俺はお前と静かに老いていく道を選ぶけれどね」
頬に触れられて、風が吹く、色のない景色を揺らす。
その風が枯れ草の下に隠れていた春を待つ青い香りを運んできた。
タイトル【したもえ】
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