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午前3時、辺りは闇に染まり静寂が支配していた。
私が生まれた街は静かに佇み、その静かさを拒まずありのままを受け入れていた。
風は少し寒く、腕を見ると鳥肌が立っていた。
電灯が統一的に並ぶ道路、蛾や蝿やよくわからない虫が目まぐるしい程に光へ集っている。
ふと視線を下げると、電灯の少し下にはセミの脱け殻がくっついているのが見えた。
よく見ると光の当たり方で見えなかったが、脱け殻の側で、まだ脱皮したての黄緑色のセミがしがみついていた。
この季節に入って初めて見て驚いた光景だ、特別に虫や蝉が好きという訳ではないが、こういうものはなかなか見れない光景だ。
…少なくとも、私の「最後の」時間に関して言えば、これが素敵な出会いとも言えなくもない。
「……もう少しね」
右手に掴む一通の茶封筒、そして、歩むその先には、地元でも危険と言われる崖沿いのある山の公園だ。
10年前に子供が崖に転落したため使用禁止になっていたが、ここ数年は自殺の名所として名を馳せている。
公園の周りには大きな金網が厳重に敷かれている。
私の身長よりも5メートル近い高さをほこり、金網の網目はとても小さく、小指さえも通らない程に間隔が狭い。網の固さもちょっとやそっとではこじ開けられないほどの頑丈さだ。
まさにネズミや泥棒の通る隙間さえないとはこの事だろうか。
だが、ネズミも泥棒も知らない抜け道があるのを、私は知っていた。
公園を越えてぐるっと回った向こう側の茂み、そこの奥を枝を払いのけて進むと、金網が切れている場所がある。
随分前にここに来た人間が道具を使い抉じ開けたのだろう、その開いた穴の大きさは小さい背丈の人間なら簡単に入れる程だ。
私はそこを通り抜けて、草が鬱蒼と生い茂る公園へとたどり着いた。
10年も使われてない公園、草が生えてるのも印象的だが、ブランコや滑り台などの遊具が赤茶色に錆びれてしまっている光景も、悲しい雰囲気を醸し出すには十分な程であった。
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