第一章

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第一章

……気づくと、白い天井をぼうっと見つめていた。 いや、正確に言うなら。 天井を見つめている私が、今、目の前でベッドへ横たわっているのだ。 何故だ?私は死んだ筈では?じゃあ何故、目の前に生きてる私がいるんだ?それを見てる私は幽霊?けど、彼女は息もしてるし、顔も血の通っている肌をしてるじゃないか?なら私は一体なんなんだ? 疑問が疑問を呼び、先程までの高揚感は消え去り、代わりに焦燥感が私の頭や身体を駆け巡るように、じわりじわりと包み込んでいた。 そんなことを考えてたら、不意に音をたてて、後ろの引き戸が開いた。 「せ、先輩!!」 あれは…会社の後輩君じゃないか、息を荒げてる様子から見るにどうやら急いで来たようであった。 彼は私が今の会社に就職して三年目くらいに入ってきた奴だ、 ちょっとそそっかしいところもあるが、柔軟に取り組む姿勢はこちらも見習う事が多く、何より楽しい奴であったので、よく絡んでは飲み仲間として交流していた。 「先輩!そ、そんな…そんなのって…!」 なわなわと震えた身体でこれまた急いで近づき、すがり付くように膝をついて、ベッドにいる私の手を握りしめた。 その握る手が強くなるにつれ、あの陽気な後輩君からは想像すらつかないほど大粒の涙を流して悲しんでいるではないか。
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