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「後輩…」
見ているにはあまりにも辛かった、大の大人が嗚咽をあげて泣くとは余程の事がない限り起こりえないことだ。
声をかけようにも、私の声は頭の中でしか反響しないかのように、口から聞こえる音は何も聞こえはしなかった。
ならば、触れることは出来るのか?生きている後輩
の震える肩を見つめ、この実体があるのかないのか定かではない右手を、彼の肩にかけようと試みる。
しかし、やはりと言ったところか。
私の右手は空気を掴むような程、彼の肩をするりと透過していった。
今ので、確信できたかはわからない。
だが、少なくとも私が考え起こりうること以外の事象が、この身に起きていることは嫌でも感じ得れた。
白く薄く光るこの顔が徐々に青ざめていくのが分かる。
洗面台にある鏡を見てみるも、私の身体は異常だ。
「嘘…確かに、でも…なんで……」
そんな問い掛けに誰かが反応して答えてくれるほど、この状況は私にとってあまり優しくないものであった。
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