第一話 アリーシアと「私」

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第一話 アリーシアと「私」

目を覚ますとそこは、いつもの天井だった。 「なんだ、夢か」 なぜ今頃小さい頃の夢を見るのか不思議に思ったが、特に気にせず私は準備を始めた。 柔らかなベッドから降り、近くにあるドレッサーまでペタペタと歩き、鏡で「私」を見る。 腰まで伸びる、うっすら青みがかった新緑色の髪。燃えるように赤い右目。ギラギラと輝く黄金色の左目。 この世界で魔女の象徴とされる容姿そのものだ。 左右の目の色が違う。髪が緑色、そして長い。 はぁ、と溜息をひとつ落とすと、私はその髪に櫛を通して、そして仕上げだ。 「アリーシア」 そう呟くと、私の容姿がみるみるうちに変わっていく。 新緑色で長かった髪は金色の肩くらいまでの長さの髪に なり、三つ編みに。左右違った瞳の色は深い青一色になった。 そこに細い銀縁のメガネをかければ完成だ。 「わたし」はアリーシア。 自信が無く、常にオドオドしている三つ編みメガネ。 薬を作ることが得意で、街に行っては薬を安く売り、みんなのために働くことが大好き。 よし、役作りは出来た。 「……い、行ってきます……!」 わたしは扉を開け、外に出た。
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