財間家

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内ポケットに入れておいた父からの封筒を取り出し机の上にそっと置く 先程までは他愛のない話をしていたが物を出した瞬間父の顔は急に硬った 今回はこの件が本命であろう 紅茶の入ったカップから手を離し私をまっすぐ見る父は真剣そのもの そんなに真剣にならなくても私が父の意見に反対するはず無いのに 「勿論行きますよ。行かない理由がありません」 「……そうか、行かない理由がない、か」 「?はい」 父の意見を尊重したのに何処か嬉しそうでない 何か不満があるのだろうか 言葉を誤った? 「手続きは私がやっておこう 椿は用意しておきなさい」 「わかりました。では私はこの辺で」 置いた封筒を手に持ち、奏が開ける扉を括れば後ろから止める言葉などない
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