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(狼煙間の奴、相当気ぃ立ってんな……)
矢木は困ったように溜息をつき、ちらりと後ろを見た。猿渡も、そんな矢木の様子に後ろを振り返る。
(作戦成功みたいだな)
不機嫌そうな狼煙間を見て、猿渡はほくそ笑み、矢木に視線を戻す。
「そうだ。実は頼みがあるんですけど」
「頼み?」
猿渡は、矢木から狼煙間を引き離すために、もう一つ作戦を立ててきていた。
「矢木さん、成績良かったですよね?」
猿渡は矢木の顔をのぞき込むようにして尋ねる。
「成績ねぇ」
矢木は困ったように視線を逸らし、頭をかく。矢木は、これでなかなか勉強が出来る。と言っても、中の上程度だが。
「悪かねぇけど……勉強なら、狼煙間のが上だぞ」
ちなみに、狼煙間は、勉強している素振りなど全く見せないのに、学年でも上位を競う成績なのだった。
「でも、狼煙間さん、人に教えるとか無理じゃないですか。実は、塾に行く代わりに勉強見てもらいたいんです」
「勉強?」
矢木は腕を組み、覗き込むように猿渡を見つめる。
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