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それからというもの、放課後になると、猿渡は矢木にべったり張り付き、勉強を見てもらったり、相談に乗ってもらった。
それもこれも、狼煙間を矢木に近寄らせないためだ。
狼煙間はと言うと、勉強している二人と一緒にいるわけにもいかず、猿渡に矢木を取られ、機嫌を損ねて犬井にあたっている。
ある放課後。
「おい! 馬鹿猿!」
矢木と猿渡が勉強をしていると、犬井が部屋に駆け込んできた。犬井は機嫌が悪そうに猿渡を睨み付け、指を突きつける。
「何だ」
猿渡は不機嫌そうに犬井を睨み返し、鼻を鳴らした。
「お前が矢木さん取ったからって、俺が狼煙間さんにあたり散らされてんだぞ!」
「悪いなぁ、犬井……」
矢木は狼煙間の機嫌の悪さをよく分かっていたので、申し訳なさそうに頭をかいた。猿渡は謝ることないですよ、と矢木を見て、犬井を手で追い払うような仕草をした。
「勉強の邪魔だ。出てけ」
「うっせーがり勉がっ! 大体、何でお前そんな必死こいて勉強してんだよ! 中間テストでトップのくせによ!」
犬井はポケットに手を突っ込み、子供のように猿渡をなじった。
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