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矢木は不可解そうに眉を寄せ、意味を考えている。しかし、諦めてもう一度猿渡に尋ねた。
「何でお前がそんな事を?」
「……俺、見たんです」
猿渡は深く息を吸い、ポツリポツリと話し出す。
「ゲーセンで、狼煙間さんと矢木さんが……その……キスしてるとこ」
「!」
(やっぱ……見られてたんか……!)
矢木は瞠目し、次いで赤くなった。
「矢木さん、嫌がってたのに……狼煙間さんが無理やり抑えつけてて……。それで、俺、矢木さんを守らないとって……」
猿渡は俯き、拳を固く握りしめた。矢木はそれを見つめていたが、やがてゆっくりと腕を組み、困ったように斜め上を見る。
「……」
(なるほどな……)
猿渡の説明で、一連の不可解な行動が全部繋がった。しかし、あの様子を猿渡に見られていたのかと思うと……。矢木は心の整理をつけるように、長い長い間沈黙すると、やがて大きくため息をついた。
「はぁ……えーと、……あのな、猿渡……」
矢木は言葉を探しつつ、ゆっくりと告げる。
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