第1章 目撃者

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「やばい、遅れたな」 猿渡は腕時計を見ながら、早足でゲーセンに向かっていた。今日は、ZOOのメンバー全員で隣町の不良グループの元に遠征することになっている。遠征と言っても、互いのメンバー確認の顔合わせ程度だが、遅れるわけにはいかない。集合時間は5時半。今すでに5時40分になっていた。 「狼煙間さんたち、来てるだろうな……馬鹿犬井まで来てたら最悪だ」 しばらくはしつこく遅刻のことを非難される事だろう。猿渡は心の準備をしてから入ろうと、ゲーセンの奥を覗いた。 「……!?」 そして猿渡は瞠目する。あろうことか、奥では矢木と狼煙間がキスをしているではないか。 「……きっ……気のせい……だよな……」 猿渡は慌てて顔を逸らし、自分にそう言い聞かせようとした。 しかし、もう一度そっと視線を戻して状況を良く確認すると、どうやら狼煙間が矢木を壁に押し付け、強引にキスを迫っているようだった。 (気のせいじゃない!) 矢木はどうやら必死に抵抗しているらしかったが、狼煙間に組み敷かれ、抜け出す事が出来ないようだ。 「……!」 そのうち、誰か人が通りかかったようで、矢木が人に姿を見られる前に狼煙間を突き飛ばすと、慌ててゲーセンから飛び出してきた。
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